- PURE ROAD -
 

フォーン!フォーン!フォーン!
凍付く寒さが続いている。俺は、今日も走り続けている。
”本日は、今シーズン最高の冷込みと成るでしょう。”
テレビでは、今朝も芸のない”オウム”のように同じ言葉を繰返していた。
スイングトップの隙間から忍び込む風は、研ぎ澄まされた集中力や闘争心
までも凍りつかせる。
それにしても、シールドを雲らせるこの白い息がうっとーしい。
この体を包み込む心地よい眠気も、国道にでる頃には振り払われる。
・・・・寒い。
国道には、いつものごとく水族館の”イワシ”のような自動車の群れが
列を乱すことなく走っている。
そして、俺はいつものごとくその脇をバーン・ストームしていく。
フォーン!フォーン!フォーン!
流れる残像の中にさえない顔のドライバーたちが映る。
やつらの中には、追越し車線へ移ろうともせず、列を乱さないように気を
使いながら、生涯を過ごす者もいるのだろう。
”道は、こんなに広いのに・・・日本人か?  つくづくバカどもである。”
と、いいつつもそんなバカどもの脇をすりぬけ、出社時刻に間に合わせようと
急ぐ自分の姿がある。・・・・・・・・同類だ。
時間的浪費はあるものの、快適なエアコンディションの中に身を置くやつらの
方が賢いともいえる。
しかし、その時間的浪費やルーチンが俺には耐え難い。
そのため、バイクに乗るということで自分の心の中に”やつら”との境界線を
引いているのだ。
バイクに乗ることで”やつら”との同化に対する抵抗を始めたのだった。
あいつと過ごしたあの日から・・・。
そう、”ピュア・ロード”を駆けたあの日から・・・・・・。
フォーン!フォーン!フォーン!